ミニマリストとは

ミニマリストとはどんな人たちでしょうか?
最近、いろいろなメディアでよく耳にするようになったミニマリスト。ミニマリストの生活スタイルとはどんなものでしょうか?また、断捨離とはどうちがうのでしょうか?ここでは最近増加しつつあるミニマリストについて詳しくご紹介します。
ミニマリストの意味と定義
そもそも、「小さい」という意味の単語にはminiという綴りが使われています。そして、ミニマルminimalとは必要最小限、最も小さいという意味の形容詞です。
ミニマリストの定義としては、「必要最小限のものだけで生活する人」のように捉えられがちですが、ライフスタイルにおけるミニマリストの提唱者、ミルバーンとニコデマスが開設した「The Minimalists」のウェブサイトには次のような記述があります。
”Minimalists don’t focus on having less, less, less. We focus on making room for more: more time, more passion, more creativity, more experiences, more contribution, more contentment, more freedom.”
(ミニマリストは、より少なく、より少なく、より少なく持つことに焦点を合わせているのではありません。私たちは、より多くの時間、より多くの情熱、より多くの経験、より多くの経験、より多くの貢献、より多くの満足、より多くの自由のための余裕をつくることに焦点を当てているのです。)
ものを最小限にするのはより多くのものを得るための活動であると説明しています。すなわち、ミニマリストとはより豊かに暮らすための一つの考え方として、必要最小限のものだけでの暮らしを実践する人といえそうです。
ミニマリストが生まれた背景
そもそもミニマリストという言葉は、どのようにして生まれたのでしょうか?ミニマリストの背景には「ミニマリズム:minimalism」という言葉が存在します。
このミニマリズムminimalismとは、ミニマル(最小限の)とイズム(主義)の造語であり、その意味するところは、
”完成度を追求するために、装飾的趣向を凝らすのではなく、
むしろそれらを必要最小限まで省略する表現スタイル”
とあります。
ミニマリズムはもともと造形芸術の分野において、1960年代のアメリカに登場し主流を占めた表現方法のことです。単純な形やその繰り返しを用いて、最小限の要素で作品を構成する手法を取り入れた芸術を示す用語です。そして、ミニマリズムを実践する表現者をミニマリストと呼んでいました。
一方、近年になって増加したのが、最小限のものしか持たないライフスタイルとしてのミニマリストです。先ほど紹介しましたミニマリストであるミルバーンとニコデマス以前にも生活における最小限を提唱する人々が登場しました。

その一人であるレオ・バボータは、アメリカのミニマリスト・ブロガーで、2010年にはタイム誌に取り上げられるなど世界の多くの人に影響を与えた人物とされています。
彼が提唱するシンプルライフの目的は、いらないものを減らしてシンプルにするのは、自分にとって本当に価値のあることをする時間を確保するためでした。
そして彼の影響を受けたミルバーンとニコデマスが2010年、冒頭にあげた 「The Minimalists」という名のウェブサイトを開設し、そこで彼らは「ミニマリスト」を名乗ったのです。
ミニマリストの類義語とその違い
ミニマリストに似たことばとして、断捨離が挙げられます。どのように違うのでしょうか?
断捨離は、やましたひでこ氏がその著書で発表したことばで、不要なモノを減らし、生活に調和をもたらそうとする考え方です。「断」=入ってくる不要なモノを断つ、「捨」=不要なモノを捨てる、「離」=モノへの執着から離れるというコンセプトからなります。
断捨離をして必要のないもの、使わないものを手放すことで、本当に必要なものに気づくという流れはミニマリズムにも似通っているようです。

しかし、冒頭でも紹介しましたようにミニマリスト達がより多くの豊かさを得るために、ものを持たないのに対し、断捨離を実践する人たちはどちらかというと、モノを断ち捨てることで得られる生活の調和をめざしているといえるでしょう。
また、先ほど紹介しましたアメリカのミニマリスト、レオ・バボータですが、彼のブログ名は「zen habit」、禅の習慣となっています。禅についての詳細はここでは割愛しますが、彼が「禅」から多くのものを吸収して最小限での生活を提唱しているということは、ミニマリストの考え方は日本の伝統的な考え方にも通じるところがあるのではないでしょうか?
ミニマリストである為には

では次に、ミニマリスト達は具体的にどのような生活をしているのか?多くのミニマリストに共通するものの持ち方や考え方について、アウトラインを見ていきましょう。
必要最低限なもののみを使う
ミニマリストは、持ちものについては「必要な数だけ」持ちます。下着を含め洋服、カバン、くつ、身の回りの道具類、消耗品、家具などすべてについて、必要最低限なもののみで生活しようとします。
それは例えば財布の中のカード類についても同様です。パソコンのデスクトップもしかりです。
ミニマリストは、特に増加が目に見えるものについてはその必要性を判断し、何が最低限必要なものかを絶えず考えています。
アイテムを長く使う
ミニマリストは、持ちものについては「お気に入り」だけを持ちます。お気に入りのものについてメンテナンスをしながら長く丁寧に使います。
たとえば、歯磨きペーストひとつをとっても、最後まで使い切ってから次のものを買うように、ものへのこだわりを大切にします。
ミニマリストはその厳選されたアイテムを長く丁寧に使うことで、無意識にそのものへの愛着心や感謝の念を増加させていると言えます。
取捨選択を行う
取捨選択とは、取るべきものと捨てるべきものとを選択することです。ミニマリストは、持ちものについては自分の基準に従い、取るべきものと捨てるべきものとを区分します。
ミニマリストは、ものや関係性の取捨選択をする過程を通して、自分の理想とする最適の暮らしを目指します。
うまく収納する
ミニマリストの持つものが必要最低限であることから、収納についてもよく見極めます。ミニマリストは衣類だけでなく、食器や本に至るまで、厳選したものをいかに収納するかに頭を使います。
必要最低限に絞ったものが本来あるべき場所に収納されなくては意味がありませんから、ミニマリストは収納場所や収納方法について試行錯誤し、取り出しやすさ、配置順などを工夫します。
管理すべきものが定位置にあることは非常に重要なことです。
ミニマリストは最大の節約術?

ここで、節約という視点からミニマリストを眺めていきましょう?果たして、ミニマリストになることは結果的に節約につながるのでしょうか?浪費の増加は抑えられるのでしょうか?
無駄なものを買わない
無駄遣いはなぜおこるのでしょうか?よく買い物が趣味という人がいますが、ウィンドウショッピングだけで終わるということは難しいと言えます。
心の趣くままにものを買う時点では心の解放を味わっても、結局は後悔することが多いのではないでしょうか?
あるいは、同じようなものばかりを買い集めることがあります。これは、集め始めたその時にはそのものを集めることが成長に必要だったからとも言われますが、いつまでも同じものを集め続けることが成長を促すとは言えません。
しかし、このような習慣はミニマリストにはありません。なぜなら、ミニマリストはものを買うことそのものよりも、自分が選んだものを所有することに重点をおいているからです。
彼らは本当に必要なものがウィンドウショッピングの中で見つかるとは考えません。
ものが少なくなる
ミニマリストは、身の回りのすべてのものを必要最低限に絞っています。
それは家具や大型電化製品についても言え、結果的にはミニマリストはより狭いスペースでの生活が可能となります。これによってものがものを増加させることもなくなります。
少ない家具や電化製品、狭いスペースや小型車においては、家賃や光熱費等の経費も少なくなります。あるいは、少ない衣類や食器類は、洗う時間や手入れを減らし、自由時間を増加させます。
さらにミニマリストは不本意な人間関係を切って、有意義な時間を増加させます。
衝動買いが抑えられる
衝動買いはなぜおこるのでしょうか?イライラがつのったり、心に空いた穴を埋めたかったりなど感情によって身の回りのもの、特に服などを買ってしまうことはよくあります。そして、それらは結局、短い期間で手放すことになることもよくあります。
買い物をするというのは、一番手っ取り早くストレスを解消できる方法です。なぜなら、お金さえ支払えば目の前の欲しいものが手に入り、自分が思うとおりの結果が得られるからです。しかし、単に「欲しいもの」と「必要なもの」とは違います。
ミニマリストは持ちものに対する基準を持ち、そのものが必要であるから買うのです。その場で気に入ったから、欲しいからと一時の衝動でものを買うのではなく、本当に自分の必要なものを落ち着いて買うことこそミニマリストの喜びにつながります。
以上のようにミニマリストでいることは、お金だけでなく時間、スペースの節約につながるためのものに対する自分の軸を持っていることがわかりました。
次の項目ではこのようなミニマリストであることのメリットをまとめてみましょう。
ミニマリストであることのメリット

ここまでミニマリストを見てきて、ミニマリストの基本的な考え方はわかりました。では、ミニマリストになることによって、実生活においてどのようなメリットがあるのかを見ていきます。
家事の効率が上がる
例えば、床にものが転がっていないだけでも掃除ははかどります。
キッチンやトイレ、浴室、玄関に至るまで床にものがないだけで違います。また、クローゼットや本棚、キャビネットの収納物が必要最低限でものの定位置が明確であれば、ものを取り出すにも格納するにも一瞬でできます。
たとえそれが冷蔵庫の中の食材であったとしても、考えられて保管されていると家事の時短につながります。
家事効率を考えると、持ちものを探す必要のないミニマリストの整理術は、有効と言わざるを得ません。
浪費が減る
浪費の中で最もよくないのが、自分の基準・価値観ではなく家族、友人、上司などの価値観でお金や時間を使うといった、消費の決定権を他人に委ねるタイプの浪費です。
彼らは必要以上に他人の目を気にするあまり、自分の人生の時間さえ浪費してしまいます。
ミニマリストは自分の理想とする生活をするために自分の基準を持ち、ものや時間を取捨選択する人です。ミニマリストであることによって金銭面だけでなく、時間の浪費、エネルギーの浪費が減ることが考えられます。
ストレスの軽減
部屋に不要なものがあふれかえっている人は心の病気にかかりやすく、何かしら精神的な問題を抱えているということが、専門機関の研究によって明らかにされつつあるそうです。
身の周りのものを減らすことは、健やかな精神状態の維持、つまりストレスの軽減にも繋がると言えそうです。
しかし、どんなものであっても、それを持つことには大抵その人なりの「思い」はこもっているものです。そこでミニマリストは、その込められた「思い」とものとを自分の基準に照らして減らし、「大切なもの」だけに集中しようとします。
ストレスフリーな暮らしとはシンプルな暮らしとも言えるでしょう。
ミニマリストであることのデメリット

さて、ここでミニマリストであることのデメリットにも触れましょう。
ミニマリストといっても人によって「必要最小限」の基準は異なります。どんなときにデメリットととらえられるかを見ていきます。
来客へのおもてなしができない
テレビ、音楽プレイヤーなど娯楽に関するものやソファー、クッション、ダイニングテーブルなど家具まで徹底的に不要としているミニマリストの場合、恋人や友達が部屋に遊びに来たとき、十分に楽しんでもらえない可能性はあります。
訪問する相手に理解があればいいのかもしれませんが、来客用の椅子もテーブルもカップもない状況で何時間も過ごしてもらうのは難しいかもしれません。
神経質になる可能性がある
ある時にはこれは必要だと考えるものでも、時間がたつにつれて不要になるものもあります。そしてその逆もあります。
したがって、ミニマリストの暮らしにはものの管理について定期的なメンテナンス、見直しが必要です。この見直しをしないと、不要なものの増加はくい止められません。
しかし、この管理を厳密にしようとすればするほど、ひとつひとつのものに対して神経質になる可能性があります。このものの管理が度を過ぎると何から何まで無駄に思えてきて、ものを持つことに罪悪感すら抱く結果となり、精神的に不安定な状態に陥ることがあります。
冒頭の「The Minimalists」のウェブサイトにあったように、より豊かに暮らすために不要なものを減らすのであり、ものを減らすことがミニマリストの目的ではないので要注意です。
大切なもの捨て後悔する可能性
繰り返しになりますが、より豊かに暮らすための一つの考え方として、最小限のものだけでの暮らしを実践する人がミニマリストです。
自分の目指す理想の暮らしを意識せずに、ただ単にものを減らし始めると、後で後悔する可能性もあります。
増加する書類やら衣類、家具を思い切って減らして見えてきたものが「こんな暮らしではない」という結果にならないように、目標を定めてものを捨てることが重要です。
ミニマリストとして生活するため一切の家具や家電を処分した人がいます。しかしながら、心地よさや欲しかった便利さを得るために少しずつものを増やしたそうです。ものを捨てさえすればいいというわけではありません。
ミニマリストに向いている人

さて、では実際ミニマリストとして暮らしていくのであれば、どのような立場の人たちがミニマリストとして暮らしやすいでしょうか?
比較的、ミニマリストの暮らしがやりやすい3つの例を見てみましょう。
大学生
一人暮らしをする大学生のライフスタイルを考えると、それ以前の家族との暮らしから「自由」の身となり、多くのことを自分で決められるようになります。
比較的小さな部屋を借り、来客も多くはないとするとミニマリストの生活に向いていると言えます。
完全なミニマリストを目指すというより、自分にとって必要最低限の持ちものとは何かを見極めるとてもよい機会ではないでしょうか?
人生のある時期をミニマリストとして過ごすとすれば、大学時代が最適かもしれません。
フリーランサー
フリーランサーとは、決まった会社や団体などに所属せず、仕事に応じて自由に契約する働き方を選択している人で、近年増加の傾向にあります。
ジャーナリストや俳優・歌手など職種は多岐にわたります。自らフリーな契約を選択し、周囲の人たちと人間関係を築いていける人たちは、明快な自分の基準をもっている人であるとも言えます。
彼らの基準が明快であればあるほど、ものの要不要の峻別は容易であり、ミニマリスト気質があるといえるでしょう。
フリーター
フリーターとは、定職につかずにアルバイトなどで生計を立てる人もしくは働く意志のある無職の人を指します。
フリーターとして過ごす期間は、収入が不安定であったり、少なかったり 、または日々増加する不安と戦わなくてはいけないときもあります。 反面、時間や人間関係においては自由であることが多いです。
発想を変えてミニマリストを実践することにより、お金の節約だけでなく、結果として自分の軸をしっかり持てるようになるのではないでしょうか?
ミニマリストという選択

必要とは、必ず要ること、なくてはならないことです。
あるものがその人にとって本当に必要かどうかは最終的にはその本人にしかわかりません。
若い大学生のミニマリストが必要とするものと、主婦のミニマリストが必要とするもの、老いた紳士であるミニマリストが必要とするものはそれぞれ違っています。スマートフォンが必要な場合もあれば、自転車が必要な場合もあれば、老眼鏡がなくてはならないときもあります。
それぞれ必要とするものは違っても、これらのミニマリストに共通するものは、「より豊かに生きたい」という意志があるということです。さらに言えば、そのものを通じて人生で何を果たしたいかという明確な目標を持っているということです。
その目標を果たすために、ミニマリストはごちゃごちゃの引き出しをかき分けたり、障害物だらけのガレージに入ったり、あらゆる服のポケットを探したりせずに済ませます。

不要なものを捨てるとすっきり気分がいいというのは確かにあります。
それだけではなく、「何のためにものを捨てるのか?」という問いへの答えは、お金や時間の節約だけでなく、「やりたくないことを減らす」ためなのです。
すなわち、人生においてやりたいことだけに焦点をあてるため、言葉を変えれば「本質に迫る」ために必要最小限のものをもつのがミニマリストです。
ミニマリストの対義語はマキシマリスト(maximalist:最大限主義者)であり、多くのものを持って高性能で便利な暮らしを目指す人たちです。彼らがたくさんのものと共に過ごすことによって、新たな機会や可能性が増加することもあるでしょう。
しかし、私たちは生まれたときも死ぬときも皆ミニマリストです。どちらのときも何も持っていません。
その間の約100年をどう過ごすかは、ものや他人が決めるものではなく、自分自身が決めること。
ミニマリストに始まり、ミニマリストで終わる人生の中であなたはどのような選択をしますか?